「あんなに頭のいいひとが、なぜ・・・?」
そんな事を思ったことはないでしょうか?
今まで、とても賢い!と思った人が突然、変なことを言い出して驚いたことが何度かあります。
また、テレビや書籍でとても賢い発言をされている方がどんどんおかしな事を言い出して、とても不思議だなぁと思うこともしばしばです。
そんな疑問の答えを探して手に取ったのがこの本です。
そしてこの本は、私の期待以上にその疑問への答えを提供してくれました。
本っ当に、多くの視点から、多くの理由が提示されていました。
そして嬉しい誤算だったのは、愚かな決断をくださないための処方箋が多く処方されていた事です。
数多くの理由で最も腹落ちしたのは
動機づけられた推論(Motivated reasoning)
です。
これは、自分の想定に合致している場合にのみ、頭を使う無意識の傾向、と紹介されています。
賢い人ほどその知性を、自分の望む論を守るために使うことができるんですよね。
これは、私の経験にも心当たりがあり、なるほど〜と納得しました。
頭が良くて、プライドが高くて狭量な人が自論を守り始めると、本当に厄介なのですよね。
議論が全く進まず、苦労した苦い経験があります。
以下、印象に残った内容を順に紹介していきますね。
知能が高い人が愚かな行動に走る主な原因 3つ
以下3つと言われています。
- 人生で起こる問題に対処するのに不可欠な、創造的知能や実務的知能
- 「合理的障害性」があり、偏った直感的判断を下してしまうこと
- 「動機づけられた推論」により、自らの立場と矛盾する証拠を否定するために優れた知能を使ってしまうこと
冒頭でもいいましたが3 がほんと印象的ですね。
賢ければ賢いほど、厄介なんです。
専門知識と慣れへの処方箋
本書では、専門知識を持った人たちが慣れにより、多くの事故や間違いを犯した事例に対して、以下2つの事例を処方箋として示しています。
- 原子力産業では安全性確認の手順を定期的に入れ替えている
- 社外取締役を導入していた金融機関は、リーマンショック時に経営成績が比較的良かった
1は、作業の慣れによる事故を防止するのに役立ち、
2は、専門知識をもっていない取締役は頑なでもなく、偏った意見もなかったので柔軟に対応して危機を回避できた、としています。
2については私も少しだけ経験があります。
私は今の部署に1年ちょっと前に異動して来たのですが、専門知識を持ち、経験が長いために見落とされている部分がいくつか目に付きました。
組織にはある程度、定期的に素人を入れた方が良いなぁと感じました。
ソロモンのパラドクスとその処方箋
「ソロモンのパラドクス」という言葉は本書で初めて知りました。
ソロモン王というのは、とても優れた王だったのだそうです。
しかし、私生活では戒律に背き1000人もの妻や妾をはべらせ、息子もろくに育てず、やがて王国は混乱と戦争に陥ったのだそうです。
要は
他人に対してはちゃんと判断できるのに、自分ごとになった途端にダメダメになる
って事です。
卑近な例でいくと、めっちゃ良い先生なのに、自分の子供はちゃんと育てられない、って感じでしょうか?
これに対する処方箋として、
自分と距離を置いた視点を持つこと
が挙げられています。
「私はその出来事に酷く絶望した」
だと、もう自分には何もできそうにないですよね。
でも、
「彼はその出来事に酷く絶望したようだ」
となるとどうでしょうか?
「彼」に対して、なにかアドバイスしたくなりますよね?
私なら
「どんな出来事だったの?そんなに絶望することかな?やれることはあるのでは?」
と聞いてしまいそうです。
そしてこの、自己と距離を置く事による効果は
「ソクラテス効果」
と名付けられたそうです。
思考力テストが示した日本人の特異性
グロスマンという研究者が考案した、賢明な思考力テストというのがあるのですが、アメリカでは年齢が上がるほど、このテストのスコアが上がっていたのだそうです。
ところが東京でテストを実施したところ、日本では若い年代でも既に年配のアメリカ人並の知恵を示しており、年齢に伴う急激な上昇は見られなかったのだそうです。
これは、日本人が自己距離化をよく実践しているのだと考察しています。
この原因として、日本語の特性では?との意見があるそうです。
日本語として、「自分を意味する言葉を一切使わないことが驚くほど多い」というのが、自己距離化に貢献しているのでは?との意見です。
翻訳書を読んでいてよく思うのが、日本での事例が多く取り上げられていることです。
しかも、和書ではいつも自虐的に扱われるのに対して、良い事例、驚くべき事例として紹介されることが多い。
このような視点は、和書ではほぼ得られることはないです。
勝間さんが翻訳書を推奨されているのですが、このように海外から見た日本、という視点を提供してもらえるのが大きなメリットだなぁと感じます。
直感を上手に使うためには?そしてマインドフルネスの代案は?
マクドナルドを超巨大企業にのし上げたレイ・クロックは自らの直感に従い周囲の大反対を押し切り、離婚してまで店の権利を買い上げたのだそうです。
直感の大事さを説きつつも、直感には誤解も多いと指摘しています。
そのような誤解を避けつつ、直感の力を借りる方法として挙げられているのが、
「マインドフルネス」
です。
もう、マインドフルネス、どこでも出てきますよね。
万能か?万能なのか?!
って思ってしまいます。
けど私、マインドフルネス苦手なんですよね。
って思ってたら、マインドフルネスの変わる案が出てました。
自分の感情を正確な言葉で述べることでも、感情の識別能力が磨けるらしいのです。
ある研究では、被験者に不快な写真を何枚か見せて、自分の感情をできるだけ正確な言葉で述べてほしい、と求めたそうです。
そのプロセスを6回繰り返しただけで、被験者は様々な感情に敏感になり、判断力も上がっていたそうです。
更にその効果は1週間以上持続したのだそうです。
これ、日々の日記で自分の感情をしっかりと表すようにすれば、良い訓練になりそうですよね?
やっていきます。
直感でのミスを防ぐ方法【直感を書き留めて、分析せよ】
専門家は長年の経験による直感を信じるあまり、判断を誤ることがあります。
しかしだからといって直感を全く信じないと時間の浪費になります。
事実、直感が正しいことも多いのです。
これへの対処法として
直感的反応を素早くノートに書き留める
を挙げています。
直感的反応を書き留めて、根拠を分析したり、別の仮説と比較したりするそうです。
医師の診断で検証したところ、この方法で診断の正確性が40%もアップしたのだそうです。
驚異的な伸びですよね。
私もぱっと思ったことをテキストに書き留め、いろいろ検証してみたいなと感じました。
読みにくい字で書かれるとウソっぽく思え、滑らかに言われたり書かれてると真実っぽく感じる
本書で確認してほしいのですが、確かに読みにくい字で書かれてるとウソっぽく思えました。
これは、流暢に話す人の言葉が真実っぽく感じるし、
たどたどしく話す人の言葉がウソっぽく思えるってのにも通じますよね。
まだ、全然紹介できていません・・・
以上、印象に残った箇所を紹介していきましたが、まだまだまだまだ全然本書の内容を紹介しきれていません。
「あの賢い人が、なぜ・・・」
という経験のある方は是非読んでみてください。
今回紹介した内容以外にも、印象に残る内容にいくつも出会えるはずです!