学生時代、星新一のショートショートをよく読んでいました。
SFを扱っていたのが好きだったのと、短いから長文が読めない私でも楽しんで読めたからです。(いまだに長編小説とかは読めません。実用書ばかり)
もう読まなくなったし、文庫は手元から処分して久しいのですが、なぜか最新よく思い出す作品があります。
「殉教」という作品なのですが。
この作品には、ある機械が登場します。
その機械は、あの世の人と会話できるというものなのですが、あの世の人は口を揃えて、あの世は素晴らしいと言います。
人々はその機械であの世の人を呼び出し、ひとしきり話をした後、どんどん自殺していきます。
自分の近しい人、信頼する人の言葉だから信用するんですね。
「死人がみんないるんだったら、あの世は人でいっぱいなはず。窮屈じゃないの?」
「いや、空間という概念が無いから、そんなことは無いよ、快適だよ」
的な会話があった気がします。面白かった。
そして世界が死体ばかりになった中、ブルドーザーで死体を片付ける男が出てきます。
一人の女性が彼に尋ねます。
「何してるの?」
「死体を片付けてるんだよ」
「なんで死ななかったの?」
「いやよくわからないけど、なんとなく死ぬ気になれなかったんだよ」
「私もついていっていい?」
「いいよ」
「これからどうなるのかしら?」
「そんなこと、わかるものか」
こんな感じの会話で物語が終わった気がします。
星新一のショートショートは、年月を経ても色褪せません。
それどころかむしろ、現実味を帯びてきて臨場感が出てきているとすら思います。
この話だって、AIが進化したら作れるかもしれません。
悪意を持った人間が、膨大な会話データを元にbotを作ったら、できちゃいそうです。
「アレクサ、死後の世界ってどんな感じ?
「それは素晴らしい世界です、早く行きましょう」
「オッケーグーグル、人は死んだらどうなるの?」
「素晴らしい世界で、楽しく幸せに暮らせるでしょう」
あと、私はこの、ブルドーザーで死体を片付ける男に惹かれます。
なんか、すごく、うらやましい。
私も静かな世界で、死体をブルドーザーで片付けたい。
自分でもなんでそんなことを思うのかわかりませんが。
私、「静かな非日常」が好きなのかもしれません。
これについてはまた別の記事で書いてみたいです。
今回書いた描写は私の遥か昔の記憶だけを頼りに書いています。
かなりいい加減ですのでしっかり知りたい方はこちらをどうぞ。
今回、この記事をを書くにあたって、
「星新一 人がどんどん死ぬ ブルドーザー」
でググって出てきたブログがこちら。
助かりました!
「年月を経ても色褪せない」
と言えばこちらも。
コロナ騒動の今、こちらも臨場感が感じられます。
「これはウイルスと人との戦争だ」
の言葉通り、雰囲気は戦時に近いのかなと思います。
その空気感を感じながらこれを見ると、当時とはまた違った見方になりますね。